研究内容

がん幹細胞の性状解析及び白血病・リンパ腫発症機構の解析

杉原 英志

1) マウスモデルを用いたがん幹細胞の性状解析

近年、白血病幹細胞の同定に端を発したがん幹細胞研究は正常組織幹細胞の研究と相まって飛躍的に進展してきた。がん幹細胞とは腫瘍組織を構成するがん細胞の階層性の頂点に立ち、様々な分化レベルの非がん幹細胞(がん子孫細胞)を産生する細胞である(図1a)。また、がん幹細胞は既存の抗がん剤や放射線治療に抵抗性を持つことで再発に大きく寄与することが報告されており、がん幹細胞をターゲットとした治療法の開発はがん研究及び創薬の最重要課題と考えられる。一方でがん幹細胞と非がん幹細胞の移行には可塑性があること、またがん幹細胞に変異が生じることでクローナルに進化することも報告されており、従来のがん幹細胞モデル(正常組織幹細胞と同様なモデル)ではなく、可塑性やクローン進化性を持つ複雑性を有していることも分かってきた((図1 b, c)(文献1及び2)。

Fig.1 CSC model.jpg

私達は現在マウス骨髄細胞を用いたex vivoモデル(図2)を基盤に造血器腫瘍における白血病幹細胞を解析することで、がん幹細胞において特異的に働く因子やシグナルを同定すること、さらにはがん幹細胞モデルの複雑性の理解を目的として研究を行っている。これらを明らかにすることで最終的にはがん幹細胞をターゲットとした薬剤の開発へと繋げることが目標である。

Fig.2 Ex vivo model.jpg

2) B細胞性急性リンパ性白血病、及び高分化型リンパ腫における腫瘍化・悪性化分子機構の解明

私達はこれまでにB細胞性急性リンパ性白血病・リンパ腫(pre-B ALL/LBL)マウスモデルを構築し解析をしてきた。その結果pre-B ALL/LBLの白血病の起源細胞が異なると薬剤における感受性も異なることを明らかにし(下図)、悪性度の高いがん細胞に特異的に効果のある分子標的薬剤を報告した。(文献3, トピックスレポートhttp://www.genereg.jp/html/topics_report/topix_repo_003.html

Topics_Fig_Sugi.jpg

さらに、現在pre-B ALL/LBLに加えて、非ホジキン悪性リンパ腫であるBurkitt lymphoma、Folicular lymphomaやDiffuse Large B Cell Lymphoma (DLBCL) マウスモデルの構築を目指し検討を行っている。今後、これらリンパ腫の発症や悪性化の分子メカニズムの解明を目標に検討を行っていく予定である。

 

参考文献

1. Sugihara E, Saya H: Complexity of cancer stem cell (Review article). Int J Cancer, 2013 Mar 15;132(6):1249-1259.

2. 杉原英志, 佐谷秀行: 癌幹細胞研究の現状と将来. 血液内科, 64: 120-126, 2012

3. Sugihara E, Shimizu T, Kojima K, Onishi N, Kai K, Ishizawa J, Nagata K, Hashimoto N, Honda H, Kanno M, Miwa M, Okada S, Andreeff M and Saya H: Ink4a and Arf are crucial factors in the determination of the cell of origin and the therapeutic sensitivity of Myc-induced mouse lymphoid tumor. Oncogene 31:2849-2861, 2012