トピックスレポート

WARTS phosphorylates MYPT1 to counteract PLK1 and regulate mammalian mitotic progression.
千代田達幸

 Chiyoda T, Sugiyama N, Shimizu T, Naoe H, Kobayashi Y, Ishizawa J, Arima Y, Tsuda H, Ito M, Kaibuchi K, Aoki D, Ishihama Y, Saya H and Kuninaka SLATS1/WARTS phosphorylates MYPT1 to counteract PLK1 and regulate mammalian mitotic progression. J Cell Biol 2012 ; 197(5) : 625-641.

われわれ哺乳類には、DNA損傷をうけた細胞が、そのまま増殖していくことのないようにする機構が備わっています。G2期からM期への移行に際して働くG2-M DNA損傷チェックポイントはそのひとつです。G2期からM期への細胞周期の進行は主にPolo-like kinase1 (Plk1)というキナーゼが担っており、DNA損傷時にはCdc14ホスファターゼがユビキチンリガーゼであるAPC/CCdh1を脱リン酸化することにより活性化させ、Plk1は蛋白分解されることによりM期への進行は阻止されることが知られていました (Basserman F et al., Cell 2008)。われわれは今回、DNA損傷時にはPlk1の蛋白分解だけではなく、Plk1を脱リン酸化することにより不活性化させる機構が存在していることを明らかにしました。

具体的には、DNA損傷時にLATS1/WARTSキナーゼが活性化し、PP1Cホスファターゼの調節サブユニットであるmyosin-phosphatase targeting subunit 1 (MYPT1)のセリン445をリン酸化することにより、Plk1の脱リン酸化が促進されます。これから、DNA損傷時にはすみやかにG2-M DNA損傷チェックポイントを作動させる機構が存在していることがわかりました。

 LATS1/WARTSは出芽酵母のDbf2キナーゼのホモログです。出芽酵母においてDbf2はCdc14ホスファターゼを活性化することにより、M期からの脱出に働きます (Mitotic Exit Network: MEN)。興味深いことに、分裂酵母のDbf2キナーゼホモログであるClp1もG2-M期の進行に関与していることから、進化の過程でMENはM期脱出からG2-M期進行に関わるように変化したのかもしれません。

 LATS1/WARTSは近年Hippo pathwayの構成分子として注目されていますが、細胞増殖とがん幹細胞の維持に抑制的に働くHippo pathwayとgenomic integrityを守る機構が密接に関与することを示しており、癌化という観点からも興味深い結果です。

Chiyoda Tet al., J Cell Biol 2012;197(5):625-641.より