トピックスレポート

xCT阻害薬は、EGFR標的治療に抵抗性を有するCD44v陽性の頭頸部扁平上皮癌細胞を選択的に死滅させる
吉武(吉川)桃子

xCT Inhibition Depletes CD44v-Expressing Tumor Cells That Are Resistant to EGFR-Targeted Therapy in Head and Neck Squamous Cell Carcinoma.
Yoshikawa M, Tsuchihashi K, Ishimoto T, Yae T, Motohara T, Sugihara E, Onishi N, Masuko T, Yoshizawa K, Kawashiri S, Mukai M, Asoda S, Kawana H, Nakagawa T, Saya H, Nagano O.
Cancer Res. 2013 Mar 15;73(6):1855-1866. Epub 2013 Jan 14.

頭頸部扁平上皮癌治療の問題点には、再発・転移および治療抵抗性の獲得が挙げられ、近年、癌幹細胞が重要な役割を果たしていると考えられています。頭頸部扁平上皮癌においても、接着分子CD44陽性の癌幹細胞が存在することが知られており、より効果的な癌治療を行う上で、これらのCD44陽性癌幹細胞を選択的に死滅させる治療法の開発が求められています。
この主要な癌幹細胞マーカーであるCD44には多様なバリアントアイソフォーム (CD44v)が存在し、癌細胞の増殖、浸潤および転移への関連性が知られています。これまでの研究で、CD44vはシスチントランスポーターのサブユニットであるxCTタンパク質と相互作用し、安定化することで、細胞外からのシスチンの取り込みを増大させると共に、主要な抗酸化物質である還元グルタチオンの産生を高め、癌細胞の抗酸化能を亢進させることを見出しました。さらに、xCTの特異的阻害剤であるスルファサラジンには、転移巣の形成や腫瘍増大を抑制すると共に抗癌剤感受性を向上させる効果があることを見出しました。しかしながら、xCT阻害剤が、癌幹細胞様の腫瘍細胞を選択的に標的とし、抗腫瘍効果を示すのかについては不明瞭なままでした。
そこで本研究では、xCT阻害剤が、頭頸部における癌幹細胞様細胞であるCD44v陽性細胞を選択的に標的とするかについて検討しました。その結果、頭頸部扁平上皮癌細胞においてはxCT阻害による細胞増殖抑制効果はCD44vの発現量と相関し、CD44v発現が高い癌細胞は、低い細胞と比較して高いxCT依存性を示すことが分かりました。また、担癌マウスにおけるxCT阻害剤スルファサラジンを用いた治療は、選択的にCD44v陽性腫瘍細胞にアポトーシスを誘導するものの、CD44v陰性細胞にはほとんど影響しないことが分かりました。さらに、スルファサラジン感受性が低いCD44v陰性腫瘍細胞では、上皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor : EGFR)の活性化を示し、xCTの活性よりもEGFRの活性に細胞の生存が依存していることが分かりました。 一連の研究結果から、xCTを標的とした治療はCD44v陽性の未分化な癌幹細胞様の未分化な癌細胞を、またEGFRを標的とする治療はCD44v陰性のより分化した非癌幹細胞をそれぞれ標的とすることが明らかとなり、両者を併用することで、CD44v発現ステータスの異なる不均一性を有する癌組織に対して、効果的な治療法を開発できる可能性が示唆されました。

担癌マウスモデルにおける、スルファサラジン治療後の腫瘍組織では、CD44v高発現腫瘍細胞の減少が認められる反面、CD44v低発現またはCD44v陰性細胞の増加が認められた。