研究内容

誘導型グリオーマ幹細胞モデルを用いた膠芽腫の新規療法確立へ

サンぺトラ オルテア

誘導型グリオーマ幹細胞モデルを用いた膠芽腫の新規療法確立へ
Research overview: using an induced glioma stem cell (iGSC) model to develop new therapies against malignant gliomas

誘導型グリオーマ幹細胞モデルを用いた膠芽腫の新規療法確立へ

膠芽腫は再発率が高く、生存期間が2年に満たない予後不良な腫瘍である。膠芽腫において治療成績が向上しない原因の一つは自己複製能、分化能が高く、ひとつの細胞からでも腫瘍塊を再構築する能力を持っている細胞の存在にあると考えられている。このような細胞はグリオーマ幹細胞(glioma stem cells, GSC)と呼ばれている。GSCは薬剤を排出する能力、DNA損傷を修復する能力とも高いため、既存の抗癌剤及び放射線治療では根絶ができない。つまり、膠芽腫の再発を予防するためにはGSCの特性を標的とした、新たな発想に基づく治療が求められている。

私たちは独自に確立した誘導型グリオブラストーマ幹細胞(induced GSC, iGSC)を用いた同種同所移植モデル、さらに遺伝子改変マウスモデル(genetically engineered mouse model, GEMM) を用いた脳腫瘍自然発生のモデルを駆使し、下記の解析から膠芽腫の新規治療確立を目指している。

  1. Sampetrean O and Saya H: Modeling phenotypes of malignant gliomas. Cancer Sci 2018
  2. Sampetrean O and Saya H: Characteristics of glioma stem cells. Brain Tumor Pathol 2013

浸潤様式の解析から新規の抗浸潤療法を目指して
Can GSCs be stopped?
From invasion patterns towards novel anti-invasion therapies

浸潤様式の解析から新規の抗浸潤療法を目指して

膠芽腫は診断時にすでに広範囲に脳に浸潤しており、原発巣から正常脳内に遊走した、高い運動能を持ったグリオーマ細胞こそは薬剤感受性も低く、再発の原因になっている。私たちは、抗浸潤療法を成功させるには ①浸潤様式の理解、 ②標的細胞の正確な同定、 ③確かな分子標的の解明、 ④薬剤投与時期の正しい選択、 ⑤殺細胞効果のある抗がん剤との組み合わせ、 ⑥薬剤抵抗性の克服、また上記のすべてが詳細に評価可能である、ヒトの悪性膠腫に類似した動物モデルの活用が必須であると考えている。

本プロジェクトではiGSC、GEMMモデルを使用し、①-⑥のすべての要素について検証している。腫瘍マウスから脳切片を作製し、それらを培養しながら、GSCの挙動を記録している。さらに、浸潤様式別に、浸潤能が高い細胞分画を単離し、浸潤のメカニズムの解析及び薬剤の浸潤能抑制効果の評価を行っている。

  1. Minami N, Maeda Y, Shibao S, Arima Y, Ohka F, Kondo Y, Maruyama K, Kusuhara M, Sasayama T, Kohmura E, Saya H, Sampetrean O:  Organotypic brain explant culture as a drug evaluation system for malignant brain tumors. Cancer Med 2017
  2. Sampetrean O, Saga I, Nakanishi M, Sugihara E, Fukaya R, Onishi N, Osuka S, Akahata M, Kai K, Sugimoto H, Hirao A, Saya H: Invasion precedes tumor mass formation in a malignant brain tumor model of genetically modified neural stem cells. Neoplasia 2011

放射線抵抗性の解析から治療抵抗性の克服戦略へ
Can GSCs be sensitized towards current therapies?
From radioresistance mechanisms towards radiosensitization therapies

放射線抵抗性の解析から治療抵抗性の克服戦略へ

GSCは非がん幹細胞と比べて放射線治療後に生存しやすい。放射線抵抗性のメカニズムはすでに複数解明されている。そのほとんどはGSCに元来備わっている幹細胞特性に関するもので、増殖遅延、DNA損傷修復能、酸化ストレス回避能などの関与が報告されている。

私たちはGSCに元々備わっている特徴以外にも、微小環境の変化、さらに細胞が放射線照射を受けることで発動する抵抗性メカニズムも存在していると考え、この適応反応をターゲットとした研究を行っている。

  1. Fujita S, Osuka S, Shibao S, Igarashi K, Soga T, Sampetrean O: Effects of fractionated radiation on murine glioma stem cell metabolism. Toho J Med 2016
  2. Osuka S, Sampetrean O, Shimizu T, Saga I, Onishi N, Sugihara E, Okubo J, Fujita S, Takano S, Matsumura A, Saya H: IGF1 Receptor Signaling Regulates Adaptive Radioprotection in Glioma Stem Cells. Stem Cells 2013

エネルギー代謝経路の解析からグリオーマ幹細胞を標的とした治療法へ
Can GSCs and their niches be exhausted?
From metabolism analysis towards GSC-specific therapies

エネルギー代謝経路の解析からグリオーマ幹細胞を標的とした治療法へ

GSCは悪性膠腫、特に神経膠芽腫において腫瘍の不均一性の大きな要因である。しかし近年では、GSC自体にも性質の異なるクローンが存在しうることが報告され、その多様性の主な原因として遺伝子異常の混在が挙げられてきた。一方、同じ遺伝子背景を持つGSCの多様性についてはまだ不明な点が多い。

私たちは同じ遺伝子改変操作によって作製したGSCを用いてそのエネルギー代謝経路の違いについて検討した結果、GSCが二つのエネルギー産生経路を利用することができ、それらの代謝経路が正常脳・腫瘍組織の中でも極めて特徴的であることを見出した。さらに、それぞれの代謝経路を利用するGSCのモデル細胞の樹立に成功した。現在はそれらの結果に基づいて、GSCの代謝特性の分子基盤、ニッチとの関連を詳細に解析し、GSCのエネルギー産生を規定し、治療標的となりうる代謝関連因子の同定を目指している。

  1. Shibao S, Minami N, Koike N, Fukui N, Yoshida K, Saya H, Sampetrean O. Metabolic heterogeneity and plasticity of glioma stem cells in a mouse glioblastoma model. Neuro Oncol 2018
  2. Saga I, Shibao S, Okubo J, Osuka S, Kobayashi Y, Yamada S, Fujita S, Urakami K, Kusuhara M, Yoshida K, Saya H and Sampetrean O: Integrated analysis identifies different metabolic signatures for tumor-initiating cells in a murine glioblastoma model. Neuro Oncol 2014
https://keio.pure.elsevier.com/ja/persons/oltea-sampetrean/publications/