研究内容

2.神経線維腫症1型(NF1, レックリングハウゼン病)の治療法確立を目指した基礎研究

有馬 好美

神経線維腫症1型(NF1, レックリングハウゼン病)の治療法確立を目指した基礎研究

 神経線維腫症1型(NF1)は、皮膚、骨、神経を中心に人体の多くの器官に神経線維腫をはじめとする様々な病変を生じる遺伝性疾患です。NF1は人種や性別に関係なく、出生約3,000人に1人の割合で生じるまれな疾患ではありますが、遺伝性疾患の中では頻度の高い疾患です。17番染色体にあるNF1遺伝子の変異または欠失がNF1の原因であることがわかっており、このNF1遺伝子は腫瘍の発生や増殖を抑制する「がん抑制遺伝子」として知られています。生まれつきのNF1遺伝子変異はNF1を引き起こしますが、近年さまざまな種類のがん患者において大規模なゲノム解析が行われ、その結果、多くのがん患者の腫瘍細胞のNF1遺伝子に突然変異がみられることがわかり、がん治療を考える上でも重要な遺伝子であることが認識されています。

 現時点では、NF1患者に対する遺伝子治療など根本的な治療法はなく、根治を目指した治療薬の開発が望まれています。そこで、NF1患者の病態を分子レベルで理解し、分子あるいはシグナルを標的とした治療を考案することを目標として研究を行っています。NF1の主な症候の一つである神経線維腫は、進行性であり、美容上問題となったり腫瘍が大きくなって機能的に不便を生じたり出血した場合、あるいは悪性化が疑われる場合には外科的手術により切除します。神経線維腫に対する治療薬を開発し、薬剤によって神経線維腫の進行を阻止するあるいは予防することが可能になれば、腫瘍による機能障害や手術による負担が軽減できると考えています。

 NF1の症状には個人差がありますが、病変は全身におよぶため、多くの診療科が治療に関わる疾患です。NF1の多様な病変に対する治療法の確立を目指し、さまざまな分野の研究者と連携して研究を行っています。

 

  • Arima Y, Hayashi H, Kamata K, Goto TM, Sasaki M, Kuramochi A, Saya H: Decreased expression of neurofibromin contributes to epithelial-mesenchymal transition in neurofibromatosis type 1. Exp Dermatol. 2010 Aug;19(8):e136-41.
  • Harigai R, Sakai S, Nobusue H, Hirose C, Sampetrean O, Minami N, Hata Y, Kasama T, Hirose T, Takenouchi T, Kosaki K, Kishi K, Saya H, Arima Y: Tranilast inhibits the expression of genes related to epithelial-mesenchymal transition and angiogenesis in neurofibromin-deficient cells. Sci Rep. 2018 Apr 17;8(1):6069.
  • https://research-highlights.keio.ac.jp/2019/07/a.html

 

Links

https://keio.pure.elsevier.com/en/persons/yoshimi-arima/publications/
https://k-ris.keio.ac.jp/html/100002477_en.html
https://www.researchgate.net/profile/Yoshimi_Arima