トピックスレポート

グルタミノリシス関連遺伝子が頭頚部扁平上皮癌におけるxCT阻害剤の感受性を決定する
梅根紀代子

近年、癌幹細胞における細胞表面輸送体の機能を標的とする治療アプローチが着目されている。 CD44バリアント(CD44v)を発現するがん細胞で発現するシスチン-グルタミン酸アンチポーターxCTは抗酸化物質グルタチオン(GSH)合成を高めることで、酸化ストレス抵抗性を促進するとともに治療抵抗性にも関与している。そのため、xCTは癌治療の有望な標的となる可能性があるが、xCTを標的とした治療に対する癌細胞の感受性の決定因子は明らかになっていない。今回、我々は頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)において、xCTとグルタミントランスポーターASCT2の高発現がHNSCCの未分化な状態と相関し、分化とともに減少することを示した。 xCT阻害剤であるスルファサラジンの細胞傷害性は、ASCT2依存的なグルタミンの取り込みとグルタミン酸脱水素酵素(GLUD)を介したα-ケトグルタル酸(α-KG)産生に依存していた。次にメタボローム解析を行ったところ、スルファサラジン投与により、システインおよびGSH含有量の減少に加えて、グルタミン酸由来のトリカルボン酸(TCA)サイクル中間体α-KGの増加を引き起こすことが明らとなった。また、GLUDの抑制は、CD44vを発現するHNSCC細胞においてスルファサラジンによる細胞傷害を著しく減少させることも分かった。以上から、スルファサラジンによるxCT阻害は、GSH合成の阻害、ミトコンドリア代謝の強化とそれに伴う活性酸素種(ROS)の生成につながり、細胞死を誘導するほどの深刻な酸化ストレスを癌細胞に引き起こすと考えられた。今回、我々はASCT2やGLUDなどのグルタミン代謝関連遺伝子が、HNSCC腫瘍に対するxCT標的治療の有効性を規定する重要なバイオマーカーとして有用であることを示した。

Shogo Okazaki, Kiyoko Umene, Juntaro Yamasaki, Kentaro Suina, Yuji Otsuki, Momoko Yoshikawa, Yushi Minami, Takashi Masuko, Sho Kawaguchi, Hideki Nakayama, Kouji Banno, Daisuke Aoki, Hideyuki Saya, Osamu Nagano: Glutaminolysis‐related genes determine sensitivity to xCT‐targeted therapy in head and neck squamous cell carcinoma. Cancer Sci. 2019 Nov; 110(11): 3453-3463.

図:頭頚部扁平上皮癌細胞株におけるスルファサラジン投与後のメタボローム解析