トピックスレポート

血管拡張薬オキシフェドリンはアルデヒド代謝を阻害することで癌細胞のxCT阻害剤に対する感受性を増強する
大槻雄士

グルタチオン(GSH)は、細胞における活性酸素の上昇を抑制し、過酸化脂質の異常な蓄積を防ぐことによって、鉄依存性細胞死(フェロトーシス)から癌細胞を保護することが分っている。したがって、細胞外のシスチンを取り込み、GSH合成を促進するシスチン-グルタミン酸アンチポーターサブユニットxCTの阻害剤は、抗癌剤として有用であると考えられている。しかし、xCTを標的とした治療の有効性は、癌細胞の抗酸化能に影響を与える細胞内代謝などにより変動することが分っている。そのため、xCT標的療法への抵抗性を克服するために、xCT阻害剤の効果を増強する併用増感剤を特定することが、癌治療の発展に貢献すると考えられる。今回、我々は血管拡張剤であるオキシフェドリン(OXY)が、xCT阻害剤スルファサラジン(SSZ)などのGSH枯渇剤に対する癌細胞の感受性を高めることを発見した。OXYは、アルデヒド脱水素酵素(ALDH)酵素の共有結合性阻害剤として働くにモチーフを含み、OXYとSSZの併用治療は細胞毒性アルデヒドである4-ヒドロキシノネナールの細胞内蓄積を誘導し、細胞死を誘導することが分った。また、マウスに移植した腫瘍を用いたマイクロアレイ分析では、この併用療法の有効性の潜在的なバイオマーカーとしてシクロオキシゲナーゼ-2が有用であることを示した。さらに、OXYを介したALDH阻害は、放射線治療によって誘発されたGSH枯渇に対しても癌細胞の感受性を高め、細胞死を誘導することがわかった。以上から、GSH枯渇剤に対する強力な増感剤としてOXYが有効であることが示された。

Yuji Otsuki, Juntaro Yamasaki, Kentaro Suina, Shogo Okazaki, Naoyoshi Koike, Hideyuki Saya, Osamu Nagano: Vasodilator oxyfedrine inhibits aldehyde metabolism and thereby sensitizes cancer cells to xCT‐targeted therapy. Cancer Sci. 2020 Jan; 111(1): 127-136.

図:SSZとOXYの併用療法により腫瘍の著明な縮小が見られた

 

図:GSH阻害療法とOXYの併用により誘導される癌細胞死のメカニズム